You are not the Messiah

 おそらく数年掃除されていないであろう、暗くて狭い通気ダクトの中。
 口の中には埃が溜まり、腕と足はとうの昔に蜘蛛の巣まみれ。前金と地図の支給が無かったら、いやそれでも、この息苦しい場所を通る必要があると知っていれば絶対にこんな仕事は引き受けなかった。
「…ていうかあいつら、地図作れるだけ詳しいのに何で自分達でやらねえんだよ…」
 相場の数倍を前払い、目的は書類の奪取なので危険は無い、結果次第では今後も定期的に依頼をしたい――ここ最近大きな仕事が入らず貧乏街道を直進していた時、見計らったようにそんな内容の依頼が舞い込んだ。冷静になって考えれば怪しすぎるそれを、条件の良さから簡単に引き受けてしまった自分が馬鹿だったのだ。
 とはいえ、引き受けてしまった以上はやるしかない。地図と照らし合わせて目的地に到達したことを確認し、音を立てないよう慎重に金網を外す。まず首だけ出して監視カメラの位置を把握し、続いて全身を部屋の中へと、なるべく音を立てないように降ろす。
 改めて降り立った部屋を見回してみると、どうやらそこは倉庫になっているようだった。
 おそらく現金の類が入っているであろう金庫、味よりも日持ちすることを優先した大量の食料品、何に使うのかいまいち分からない機械の部品――そして、整然と並べられた本の山。他の物がガラクタ同然に積まれている中で一際目を引くこの本棚に、今回の目標があるはずだった。
「さてと……こりゃ一個ずつ見てくしかない、か」
 監視カメラの動きに注意しつつ、数百はあるだろう大量の本を端から順に取り出して目を通していく。大部分がその辺の一般書籍にそれらしい表紙をかぶせただけ、あるいは完全に外側だけのダミーだったおかげで思ったよりも作業は早く進み、程なくして目指していた一冊にたどり着く。
「これか、『翼狩り報告書』ってのは…」
 黒一色の簡素な表紙に、飾り気の無い字体で打たれた白インクの表題。
 依頼を受けた一番大きな理由は、この本の内容が気になったからだ。

 ――この世界には、“有翼種”と“そうでない者”が住んでいる。
 有翼種とはその名の通り、背に翼を持つ者達の総称である。その翼は空に舞うことを可能にするだけでなく、各個人ごとにそれぞれ違う不思議な能力を与えていた。ある者は並外れた腕力を、ある者は常軌を逸した知力を、ある者はそれらの力を増減させる特異なものを。
 彼らはその能力からくる力の差で互いの地位を定義し、階級社会を作り上げていた。そしてその頂点に立つ最も強大な力の持ち主――王は、ある日突然、翼を持たぬ者達“地上種”への侵略戦争を開始した。
 当然ながら、戦争は特殊な力を操る有翼種が終始優勢であった。だがしかし、千年以上昔の出来事であるそれを記した数多の書物は全て、その終わりを「地上種の勝利」と記している。簡単な話である。王の独裁と利益の見出せない戦いに疑問を持った者が、裏切ったのだ。
 その者は、両者に平和をもたらす存在として“救世主メシア”と呼ばれた。
 だが、話はここで終わらない。救世主の働きによって戦争は終わったが、敗れた有翼種に待っていたのは和解と共存による平和ではなく、差別と追放による地獄だった。“翼狩り”と総称されるそれらの運動によりほぼ全てと言っていいほどの有翼種が殺害され、生き残った者達も外界から閉ざされた地に隠れ住む生活を余儀なくされた。救世主は最後まで平和的な手段を説いたが、彼一人の叫びは大衆の憎悪に沈んで消え、やがて彼自身もどこかへと去っていった。

 それから永い時が過ぎた今でも、こんな本が存在するように翼狩りは続いている。その大きな理由として、“有翼種の自然発生”がある。有翼種からは当然翼を持った子供が生まれるが、ごく稀に、血縁などを全く無視してそうでない者から生まれる場合があるのだ。割合にして、数百人に一人。大抵の場合は生まれた直後に殺されたり、様々な機関に引き取られて実験動物とされた挙句にやはり殺される。運が良ければ“最後の親心”として貧民街に捨てられ、そこで翼を隠しながら生き延びる者もいるらしいが、自分はまだそういった連中に会ったことは無い。
「姉さんに、もっと聞いとけばよかったな」
 ふと、今はいない人を想う。
 あの人は、これの内容を読んだらどんな反応をするのだろう。悲しみに沈んで涙を流すのか、怒りに任せて破り捨てるのか、それともいつものように微笑んで、自分のことを心配してくれるのか。
「…いや、今考えることじゃないか」
 本来の目的を思い出して思考を切り替え、仕事の続きに取り掛かる。肩にかけた鞄を開き、入っている工具や食料の類を押しのけて本を押し込む。監視カメラの動作に異常が無いことを確かめ、入ってきた時同様に音を立てないようダクトへ入り、外した金網を元に戻す。来た道を逆に辿って出口へと、埃と戦いながら進み始めた。



 ◆  ◆  ◆



 ダクトへの出入り口である整備員用のハッチを開けると、まず最初に三日月が見えた。次に、手を伸ばせば届きそうな位置にある雲が視界を覆い、それでようやく、ここがどこなのか思い出す。打ち付けるような強風、数個の巨大なプロペラによる機械音の多重奏。少し歩いて手すりから身を乗り出せば、眼下には豆粒ほどの大きさに見えるビルの群れ。ここは――飛行船の上だ。
「あー、そっか。そりゃオレ以外には無理だよなぁ…」
 無数の明かりを見下しながら、呼吸を整える。背中に意識を、力を集中させる。全身の血液が収束していくような感覚があり、そこに隠していた存在を浮かび上がらせる。蛹が蝶へと羽化するように背中一面へ広がったそれは、白く大きな、一対の翼。
「さて、ずらかりますか」
 この世から追われし者の証を風になびかせ、手すりに右足を乗せる。そのまま蹴って跳躍しようとした瞬間――激痛が脇腹を貫いた。
「…っ、誰だ!」
 倒れてしまいそうな痛みに耐え、振り向く。そこに、不気味なほどの笑顔をした男が一人、立っていた。こちらに向けて真っ直ぐ掲げられた右手には、おそらく今自分を撃つのに使った、サイレンサー付きの拳銃が握られている。
「おやおや、泥棒さんのくせに態度が大きいですねぇ……まあ、それくらいの質問なら答えてあげましょう。私はこの飛行船の所有者にしてアルケンジェル社の社長、ララリエル様の右腕たる秘書兼護衛兵長のザキヤ、と申します。一瞬ですがお見知りおきを。それと、ついでだから教えてあげましょう。あの本棚にはダミーに見せかけた振動感知式のセンサーが仕掛けてあったんですよ」
 気づきませんでしたか? と言葉を締めくくったザキヤの顔は、終始笑顔のまま微動だにしなかった。少し指に力をかければ殺せる相手への余裕からでは無い、この顔が普通なのだ。今まで仕事をしてきて何度か見たことのある、殺すという行為に何も感じない鍛え抜かれた殺し屋の顔だ。
「へえ、色々教えてくれてありがとよ…」
 脇腹の傷を塞ぐフリをして、気づかれないよう背中へと手を伸ばす。
「けど、一瞬だけお見知りおきをってのは…」
 かすかに動かした翼の先が、伸ばした右手に触れる。
「――聞けねえな!」
 自分の翼から羽を一枚掴み、力任せに引き抜く。
 異変に気づいた相手が引き金を引くより早く、ナイフと化した羽を振るう。真っ二つとなった銃身が床に跳ね、乾いた音を立てた。
「なるほど、特異な力をお持ちのようで」
 そう言って笑うザキヤの左手には、すでに背中から取り出した別の銃。返す刀で首を切ることは諦め、後方に跳んで距離をとる。左手で羽を何枚か毟り取り、着地を狙って放たれた不可視の銃弾へと投げつける。金属音が鳴り響き、羽が一枚砕けて散った。
「どーだ、このやろ……」
 喋る余裕こそあるが、脇腹の出血が思ったよりも激しい。これ以上の戦闘は無理だと本能が告げる。羽の欠片が風で飛ばされていく向こうに、構えなおされた銃口が見えた。こうなったら、あれを使うしかないだろう。そう考えた刹那に――銃声。



 ◆  ◆  ◆



「やれやれ、逃げられてしまいましたねぇ」
 現在の世界において飛行機械の開発技術を所有する唯一の企業、アルケンジェル社。その社長であるララリエルという男はまだ青年と言っても差し支えないほどの年齢で、彼の側近は全員彼より年上である。飛行船の上で空を見上げながらため息をつくザキヤは、一応その中のリーダーということになる。
「まったく、一番可能性の低い場所を見張って楽しようと考えていたのに……有翼種ですか」
 気だるげに呟き、外壁に設けられた通信機を手に取る。彼と彼の部下数名にだけ使用が許可されている専用コードを入力し、コール音を聞くこと三回。通話状態を示すランプが灯った。
「社長、私です。もう連絡が行っていると思いますが、あの本を持っていかれてしまいました。……ええ、政府への提出用なので“アレ”に関する記述は省いてありますが。それよりも気になることが一つ。実際に戦ったのですが、あの少年は――」
 数分前の出来事を思い返す。
 とりあえず減らず口を塞いでやろうと放った銃弾は、少年に当たるよりも早く“何か”に弾かれた。それが少年の右手に納まった長剣だと気づいた時にはもう銃が破壊されており、驚く暇も無く渾身の蹴りで壁まで吹き飛ばされていた。そのまま追撃をせずに逃げたということは、向こうにも余裕が無かったのだろう。床に目を向ければ、そこらじゅうに血溜まりが形成されている。
「――羽を刃に変え、あげくには剣と化してみせました。もしかすると、“メシアの翼”なのでは?」



 ◆  ◆  ◆



 ――あなたはきっと、大きな波に呑まれるわ。世界を変えてしまうような、大きな大きな波に。

 どうして。

 ――あなたの力が、あなたじゃない誰かにとても似ているの。だからみんなが、あなたにすがり、あなたを頼り、あなたを利用しようとする。

 よくわからない。

 ――そう、あなたにはまだ早すぎたかしらね。でも、これだけは覚えておいて。

 なに?

 ――きっといつか、皆が助けて欲しいとあなたに望むわ。でもあなたの力では、そんなことはできない。あなたの力は、一人を護ることしかできない。誰に何と呼ばれても、あなたはあなたでしかないことを忘れないで。そして、あなたにしか護れない人を見つけるの。

 わかった。がんばる。



  ◆  ◆  ◆



 夢を見ていた。
 内容は思い出せないが、ひどく居心地のいい、温かい夢だった。
「目は覚めた?」
 突然の声に反応し、意思より先に体が動く。毛布を跳ね除けて上半身を起こし――鈍い痛みでそこから動きが止まった。腹に目をやると、撃たれた傷は白い包帯に覆われている。
「血まみれで倒れてたから心配したけど、大丈夫みたいね」
 声のした方に振り向くと、見知らぬ誰かがそこに居た。優しく微笑んだ口元に、全てを慈しむような眼差しをした、自分と大して歳の変わらないだろう少女だった。見ているだけで温かくなるようなその笑顔に、一瞬あの人の顔が重なる。
「姉さ…いや、あんたは?」
「私はシエルよ。あなたの名前は? 綺麗な翼の人」
 翼、という単語に慌てて背中の感触を確かめる。案の定、まだ翼をしまっていなかった。そういえばあの後、逃げ切って着地した途端に意識が揺らいでその先の記憶が無い。これまでの会話から察するにこの少女、シエルが助けてくれたのは明らかだが、そんなことをする理由がいまいち分からない。普通なら報奨金目当てに政府へ引き渡したりするものだ。
「オレは……ギオン。見ての通り、翼持ちだよ」
 少し躊躇い、会話を進めるため自分のことを話す。翼はしまった。
「あんた、何でオレを助けた」
 今度は即答せず、少し考えるような素振りを見せてからシエルは口を開いた。
「えっとね、私、有翼種を助ける活動みたいなことをして各地を回っているの。この街には数日前に来たばかりで、地理を覚えよう思って歩いてたらあなたが倒れてて」
 初対面の相手が言うことを全部信じるほどお人好しではないが、理由としては納得できなくもない。たしかに、そういった活動をしている者もいると聞いたことはある。しかし。
「それ、何時の出来事だよ」
 ここは比較的寒い地方だ。窓の景色から察するに貧民街の中でも比較的整備された地区にいるようだが、それでも暖房の類には期待できず、夜中――仕事に選んだ時間――は傷を負ったまま数時間も倒れていれば確実にこの世から去ることになる気温だ。そんな時間に少女が一人、地理を把握するために歩き回ったりするのだろうか。
「……私ね」
 質問の意図を汲んだらしく、シエルが答える。
「最近とうとう、やってることが政府に見つかっちゃってね。半分は逃げるためにこの街へ来たようなものなの。だから、昼間に出歩くのが怖くて」
 うつむきながら話すその姿は、自分でも甘いと思うが嘘をついているようには見えなかった。これ以上詮索しても彼女に悪い気がして、本題に入る。
「あー、疑って悪かった。助けてくれて本当にありがとう。それじゃ、オレはそろそろ行くから…縁があったらまた。便利屋やってるから、何かあったら依頼に来てくれてもいい」
 窓から身を乗り出し、目線を下へ向ける。まだ低い位置にある朝日が照らす道路に人影は無い。今回の依頼主から指定のあった合流ポイントを思い出し、時間が十分あることを確かめる。背中に意識を集中させ――ようとしたのを、「ちょっと待って」という声が遮った。
「便利屋なら、早速だけど頼みたいことがあるの。聞いてくれるでしょ?」
 振り向いた先にあったのは、シエルのいたずらっぽい笑み。
 その手には自分の鞄と『翼狩り報告書』が、しっかりと握られていた。



  ◆  ◆  ◆



「…で、そのお嬢さんをうちで保護してほしい、と」
 腕を組みながら困惑した顔でこっちを見つめる、今回の依頼主であるネルノと名乗った男。とある組織――組織名などの詳細をまだ教えてもらっていない――の外交担当らしい彼は、つり目気味な普段の営業スマイルを忘れて一人唸っている。まあ、頼んでいる内容が内容なので無理もない。
 シエルからの頼みは要するに、政府に追われる身だから政府と敵対する組織に匿ってもらえるよう取り計らってほしい、ということだ。普通ならそんな、自分から爆弾を抱え込むようなことをする奴はいない。しかし…あの本を読まれてしまった。そこは完全に自分のミス。多分この後ネルノに言われるだろう言葉が想像できる。
「やっぱり、うちで預かるのは無理じゃねーのかなぁ、と。ここは責任とってあんたが…」
 当然といえば当然だ。向こうとは別に、長い付き合いや信頼があるわけでもない。一回きりの依頼の報酬として引き受けるには、割に合わない相談だ。
「分かった。それじゃ、依頼の品は渡したからこれで。…行こう、シエル」
 残念そうな顔でうつむいたままのシエルを促し、とりあえずは彼女の家にでも戻って今後のことを決めようと考える。何にせよ、あれを見られた以上は野放しにしておくことなどできない。多分、そのことを計算した上で頼んできたのだろうが。
 とにかく来た道を戻ろうと足を踏み出した、その瞬間。
「おい、待て」
 どこからか声をかけられた。声の聞こえた方向――自分の隣に建っている小さな廃屋の屋根の上に目をやると、そこには自分と大して歳の変わらないだろう男が一人。両足のベルトに収めたいくつもの銃と睨みつけるような顔を見つけたネルノが小さく「あ、若旦那」と声を漏らすが聞こえた。
「使えるようなら今後も依頼をすると、最初にネルから説明があったはずだ。その女の身柄も保証してやるから、もうしばらく雇われてもらうぞ」
 嫌な予感がしたが、拒否権は無さそうだった。



  ◆  ◆  ◆



 廃屋の中から下水道に入り、蛇行しながら進んで十分と少し。若旦那と呼ばれた男の案内でたどり着いたそこは、どうやら組織の拠点らしかった。かつては栄えていたのだろうホテルの地下部分を改造した作りになっており、作業中らしい数人がせわしなく駆け回っていた。フロアの中央に目をやると、月とナイフと銃弾をあしらった旗が掲げられているのが見える。
「…なるほど。あんたら、噂に聞いた“月夜の双牙”か」
 先頭に向けて放った言葉に答えたのは、最後尾を歩くネルノ。
「ご名答。そしてそちらが若旦那――って呼んでるのは自分だけなんだけど、とにかく我らのリーダーである二人“双牙”の片方、“焔の射手”ファルフサ。銃を握ったら並ぶ者は、自分の知る限りじゃいねーかな」
 そんな説明を聞いているうちに、いくつか並んだ扉の中の一つを前にして全員の足が止まった。扉にかけられたプレートには「会議室」と書いてある。ネルノが前に出て鍵を取り出し、その扉を開けた。
 部屋の中は実に簡素なものだった。一辺に二人座れる四角テーブルが中央に置かれ、部屋の隅には予備のイスと観葉植物がそれぞれ一つ。地下なので窓は無く、白一色に塗られた壁が今にも消えそうな蛍光灯の光に照らされ、かろうじて闇を払っている。
 部屋の入り口に立ち尽くすこちらには目もくれず、先に入った二人は勝って知ったる様子で席に着く。ファルフサがこちらから見て奥、ネルノが右側。どうしたものかと逡巡していると、通路から数人分の足音が聞こえてきた。
「新入りか? 邪魔だからどけ」
 最初に入ってきた女は、開口一番そう言いながらナイフを抜き放ってきた。慌ててシエルの腕を引っ張りながら道を開ける。女は足のベルトにナイフを戻すと、こちらを見ずに鼻で笑ってそのままファルフサの隣に歩いてゆき、当然のようにそこへ座った。
「えっと、その人が“双牙”って呼ばれてるもう一人?」
 シエルの問いに答えたのは、またもや向けられた本人ではなくネルノ。
「そう、彼女は“鮮血の堕天使”ツシュルータだよ、シエルちゃん」
「アタシは好きでそう呼ばれてるわけじゃない」
 即座に通り名を否定する姿に反抗期の子供に似た印象を受けたが、ここまでの短いやりとりでも感じられた性格からして、言ったら切り殺されるに違いない。口を結び、表情を悟られないよう扉の外に向き直る。そこへ、残りの足音が全員まとめてやって来た。



  ◆  ◆  ◆



 各々の自己紹介が終わったところで、改めて周囲を見渡す。自分の正面にいるのがファルフサで、その左隣、つまりシエルから見て正面にツシュルータの仏頂面。右側には先ほどから色々と資料を積んで眺めているネルノ――元々どこかの社長らしく、組織の実質的な運営を任されているそうだ――と、その資料に隠れてしまいそうな背の低い男。ヒキルという名らしい彼は、こう見えて年長組らしい。左側の席に並ぶ二人は、この中で一番の長身を誇るエイトという男と、ネルノから借りた『翼狩り報告書』に目を落としているファストという金髪の少年。それぞれ特攻隊長と参謀のような役割らしい。
「…なんとなくですが、アルケンジェル社の行動が分かってきました」
 皆が押し黙る中、物凄い速度で本を読み終えたファストが唐突にそう言った。
「ギオンさん、シエルさん、貴方達はこの本の内容に何か違和感を感じませんでしたか?」
「は?」
「え…」
 いきなり話を振られて、返事に詰まる。違和感と言われても何のことだかさっぱり分からない。書いてあったことはせいぜい、翼狩りの対象となった有翼種の個人情報と通報者へ与える褒賞について、それに提出先である政府への冗長な謝辞くらいだったはずだ。隠したページなども無かったし、おかしな部分はどこにも見当たらない。
 隣の様子を伺うと、困惑した顔と目が合った。
 それを見たファストは、諦めたように話を続ける。
「この本には“捕らえた有翼種をどう処理したのか”が、一切書かれていないんですよ。まあ、そのことを記載するのは義務ではないのですが、政府から正式に依頼されて翼狩りを行っている他の企業や団体の報告書には必ず書いてあります。それが、これには一切無いんです」
 そこで言葉を区切り、エイトを小突く。ネルノの隣に積まれた資料を目線で示し、自身の手の長さでは届かないそれを取るよう促す。エイトの顔が弟を可愛がる兄のように和らぎ、紙の山から迷い無く一枚を抜き取ってファストに渡す。
「これは、ここ数年で僕達が把握できたアルケンジェル社による翼狩りの記録です。おかしな事にやつらは、誰かが見ている前で有翼種を殺したことが無いんですよ」
 差し出された資料を二人で覗き込む。日付と詳細だけで構成された単純な文字だけの表が数十行に渡って続いており、どの行にも必ず「捕獲した後飛行船に収容。以後船内からの移送は確認できず」と書いてある。これらが意味するところは、つまり。
「政府にも言えないような“何か”のために利用してる、ってわけか」
「だったらそれが何なのか早く調べな。そしたらアタシらが乗り込んで叩き潰して終わりだ」
 冷静なファルフサに対し、結果を要求するツシュルータの苛立った声。ネルノが「まあまあ」と慣れた様子で場をやり込める。“月夜の双牙”に用心棒として加わるのは、それなりに大変そうだ。
「……ねえ、ちょっと聞いてもいい?」
 苦笑気味にリーダー達のやりとりを見つめていた皆の視線が、一斉にシエルへと向けられた。いきなり全員から注目されて驚きながらも、口を開く。
「あなた達、もしかして有翼種なんじゃないかしら。ファルフサさんが“鷹の目”で、ツシュルータさんが“旋風の脚”…違った?」
 その瞬間、場にいた全員が手品でも見たように目を見開いた。こういう反応をするということは、事実なんだろう。信じられないが。隠した状態の翼は、見分けようとして見分けられるようなものではない。それは実際に翼を持っている自分が一番よく知っている。それなのに彼女は、初対面の相手に翼があることを、しかもその能力まで見事に言い当ててみせた。一体、どうやって。
「あ、ほら、私、今まで有翼種の人を何人か見てきたからなんとなく雰囲気で分かるの。能力は使ってる武器から想像しただけで…」
 理由は納得できないこともないが、一気にまくしたてる姿はひどく不自然だった。さらに何か続けようとして、そこで言葉に詰まってうつむく。発言者のいなくなった部屋に、重苦しい沈黙が流れた。
「…ああ、そうだ。まだ聞いていなかったけれど、ギオン君の翼は何ができるんだい」
「そうですね。ボクも気になっていたところです」
 機転を利かせたネルノの言葉に、エイトが同意する。全員の視線が微妙に動き、こんどは自分に集中した。そのうちこうなるだろうと予測も覚悟もしていたが、この状況は少々まずい気がした。
 ――あなたの力はとても珍しいから、たとえ依頼主に頼まれても簡単に見せたら駄目よ。
 便利屋になると決めたあの日、姉がくれた最後の忠告を思い出す。そう、本当ならこの力は誰にも見せるべきではない。千年以上になる時の流れの中で、ただ一人にしか扱えなかった、自分が持ってることなどありえないはずの能力。
 立ち上がる。背中に意識を集中させ、そこに白く輝く一対の翼を広げる。背中に腕を伸ばして羽を一枚、掴む。力を、剣の形のイメージをその一点に集中させ、腕を引き抜く。抜き取った羽は半透明に輝く一振りの剣へと変化し、そこにあった空気を切り裂いた。
「…これが、オレの力だ」
 誰も、何も言わなかった。ただ呆然と、翼から生まれた切先を見つめている。かつてメシアと呼ばれた者にしか使えなかったこの“翼の剣”が、自分の持つ力の全てだ。



  ◆  ◆  ◆



「いつものやつ、二人分頼む」
 建っているビルの半分は、治外法権区域なこともありならず者の寝床として荒れ放題になっている貧民街。そんな中の一区画に、そのパン屋はある。廃墟同然の建物が並ぶ中で一件だけ小麦色に塗装され、常に焼きたてのパンと淹れたばかりのコーヒーの香りを漂わせるその店は、かなり目立つ。
 そんなものだから、この街に捨てられた子供の大半はこの店で泥棒を働く。店長も店員も特に対策をしたりしないものだから、調子に乗って何度も繰り返す。だがそのうちパン以外を盗むようになって物の流通というものを勉強し、この店がどれだけの苦労の元に成り立っているかを、これ以上盗んだら二度とこの店のパンが食べられなくなることを知り、盗まなくなる。自分も昔は、そんな子供の一人だった。
 改心した頃、店長に何故こんな場所で店を開くのか、この味なら普通の街でも十分にやっていけるのにと、それとなく聞いたことがある。その時彼は、笑ってこう答えた。
「パンは万人に食べる権利があるはずだ。なのにこの街にはそれが無い。だったら自分が作って食べさせてやる」
 その主張に共感した者は多く、最初店長一人だった店の規模は年々大きくなっていった。人脈が安定した材料の仕入れを可能にし、二年ほど前からはコーヒーがサービスで出せるまでになった。さらに現在は、いくつかの組織と定期購買契約すらしている。
「いい話ね。…おいしい。関わった人達の想いが伝わってくるみたい」
「おう、そう言ってくれるとこっちとしても作った甲斐があるってもんだ」
 シエルの笑顔に、店長が笑って答える。たしかにこのパンには、彼女の言う通り沢山の想いが詰まっている味がする。自分もたまに材料の仕入れを手伝ったりするので、余計にそう感じるのだろう。
「…で、いつの間にこんな可愛い子捕まえたんだ?」
「なっ…護衛だよ。有翼種の保護活動してたら政府に目付けられたんだとさ」
 店長の冷やかしを適当に受け流す。それよりも。
「なあ、あんただろ。“月夜の双牙”にオレのこと紹介したのは」
 言った瞬間、店長は笑みを深くして黙った。大当たりらしい。
 数秒ほど睨みつけると、観念したように口を開いた。
「いやな、双牙の二人とも結構長い付き合いなんだよ。そいつらから直々に、空飛べて腕が立って一番信用できる奴を紹介してくれって頼まれたら、お前しかいないわけだ」
 むしろ光栄に思え、と言いたいらしい。呆れて言い返す気にもなれない。どうせ説き伏せたところで、今置かれている立場――政府とアルケンジェル社を叩き潰し、この国を変えるための戦いの当事者――が変わるわけでもない。変わったらどれだけ楽なことか。アルケンジェル社は政府に取り入って莫大な援助を得ている最強の軍事企業だ。たしかにここを潰してしまえばアルケンジェル社の力に依存する形になっている政府も同時に崩せるが、言うと為すとでは全然違う。
「ねえ、食べないならもらってもいい? 私このパン気に入っちゃった」
 何もしなくていいシエルの無邪気な笑顔が、眩しい。
 だけど、少しあの人に似ていて、心地よかった。



  ◆  ◆  ◆



「それでは、予定通りにお願いします」
「…………はい」
「あなたは神童と呼ばれながら、妹が有翼種だったために世を追われた。両親は迫害の日々に耐え切れず自殺。…それだけあれば、この世界が嫌いになるのは、壊したくなるのは当然でしょうね。でも、もうすぐ終わりです。あなたの協力があれば、それはさらに早まる。頼りにしていますよ」
「………………」



  ◆  ◆  ◆



 それから数日は、拍子抜けするほど何も無い日々が続いた。
 政府やアルケンジェル社の動向調査、各種武器や消耗品の調達などは全て“月夜の双牙”に所属している大勢の組織員にやらせて事足りる。入ってくる情報を分析する頭脳労働はネルノとファストが全部引き受けるので、自分のすることはせいぜい、双牙と戦闘訓練をすることと、シエルに街を案内して回ることだけだった。
「あの二人、なんで翼を出さないんだろうね」
 訓練を終えた後の暇な時間をどう過ごすか悩んで、結局シエルと二人で街中を歩いていた時だった。隣を歩く彼女が、唐突にそう言った。
 翼がもたらす力は大別すると、自分のように翼自体が武器になるものと、純粋に身体能力を強化するものとに分けられる。双牙の二人が持つ力は後者だ。ファルフサは狙撃スコープのように遥か彼方まで見通すことのできる“鷹の目”、ツシュルータの“旋風の脚”は驚異的な脚力を生み出すことのできる力だ。こういった力の特徴は、翼を隠していてもある程度の効力を発揮することができるという点。
 だが、シエルが求めている答えは、おそらくこんなものではないはずだ。
 ここ数日の訓練で、あの二人は翼を一切見せなかった。というよりも、見せたくないようだった。常に翼を出して戦う自分に苦戦を強いられても、絶対に翼を頼ろうとしなかった。それは何故なのか、ということだろう。
「多分あいつら…翼が憎いんだろうな。世界から追われるようになった原因に頼りたくなくて、それであんな戦い方するんだ。オレも昔はそんな風に考えてたことがあって切り落としてやろうとしたら…姉さんに怒られた」
 昔の自分を思い出して苦笑する。
「そう……あ、そういえばあなた、初めて会った時に私のこと「姉さん」って言いかけたわよね。あなたのお姉さん、どんな人だったの?」
 会話を続けるためになんとなく言っただけで、他意など無いのだろう。それでもやはり、姉の話をするとなると傷をえぐられるような感触がある。あの人の笑顔が、永遠に思えた幸せが、一瞬で砕けたあの日の記憶。できれば話したくない。
 ――だけど、彼女なら。姉に似た雰囲気をもつこの少女になら、全てを話してもいいと、自分のことを受け入れてほしいと、いつの間にかそう思えるようになっていた。
「……レモナ姉さんは、お前みたいに有翼種の保護活動をしてたんだ」
 もう顔も覚えていない両親に連れられて、そのまま廃ビルの中に取り残された自分。声が枯れるまで泣き叫び、刺すような冷気に明確な死を感じたその時に、あの人はやってきた。毛布をかけながら「もう大丈夫」と微笑んでくれた顔は、今でも忘れない。
 見ず知らずの自分を弟として可愛がり、これ以上無い愛情を注いでくれた。特異な翼がやがて不幸を呼ぶだろうことを予感し、忠告と助言をすることも忘れなかった。そんな、永遠の優しさに包まれて数年が経った頃。
「資金繰りが苦しいのはガキの目で見ても明らかだったからな。便利屋になるって決めて、そのことを話したんだ。姉さんは特に反対もせず、最後までオレの翼のことを心配してくれた。そしてその日の晩に――“翼狩り”が来た」
 後で調べて分かったことだが、付近の住民に通報した者がいたらしい。今にも破壊されそうな扉を必死で押さえつける姉は、窓から逃げろと叫んだ。理屈は分かる。どちらも捕まるよりだったら、自分だけでも逃げ延びる選択をするべきだ。もしもの時はそうするようにと、何度か言われてもきた。だが、それでも体が動かなかった。
 ついに扉が破壊され、姉を巻き込みながら吹き飛んだ。全身に防護服をまとった数人が部屋へと侵入し、構えた銃を一斉に自分へと向けた。そこへ立ち上がった姉が体当たりし、再び逃げろと叫んで、弾かれたように体が動いた。翼を広げて窓から飛び降り、飛翔。放たれた銃弾を必死でかわし、一度も振り返らずにそのまま逃げた。振り向いたら、絶対に戻ってしまうから。そしてそれきり、自分があの部屋に戻ることは、無かった。
「…ごめんね。こうすることしかできなくて、ごめんね」
 話し終えて顔を上げると、シエルは泣いていた。
 自分のために、泣いてくれていた。
 それがどうしようもなく嬉しくて、自分の目からも涙がこぼれた。なんとなく顔を見られたくなくて、思いきり彼女の体を抱きしめた。彼女は、何も言わずに抱き返してくれた。もう何年も忘れていた温かさが、そこにあった。

「――感動のシーンを壊してしまって申し訳ありませんが、私も話に混ぜてくれませんかねぇ」

 突如路地裏から響いたその声には、聞き覚えがあった。
「…何の用だ、ザキヤさんよ」
「覚えていてくださって、光栄です」
 ゆったりとした動作で姿を現した、笑い顔の男。油断なく銃を構え、背後には十数人の武装兵を引き連れている。まるで、最初からこちらの行動を把握しているようだった。どうせ手の内は把握されているのだから、こちらも加減はしない。翼を広げ、剣を抜き放つ。
「さて、用件は二つです。まずはあなたへの伝言。社長があなたのことを気に入りましてね、我々の仲間にならないかということです」
 くだらない。内心で吐き捨てて、左手に羽のナイフを握り返事の代わりに投げつける。相手は表情を変えぬままその場から動かず、頬すれすれを刃が通り過ぎていった。
「では、もう一つ。そこのお嬢さんを頂いていきます。――やれ」
 冷酷に言い放ったザキヤの後方で、一斉に銃を構える音がした。慌てて飛び退いた瞬間、今の瞬間まで自分がいた場所に銃弾の雨が降り注ぐ。弾幕に遮られた反対側で、ザキヤが突然の出来事に反応できないシエルへと走る。翼を翻して銃を乱射する兵士の中へと突っ込み、ためらうことなく一閃。三人をまとめて切り伏せ、銃弾の雨が和らいだ一瞬の隙にシエルの元へと飛び――その時にはもう、ザキヤの握る銃がシエルの額に重ねられていた。
「――早く逃げて! あなたのこと、信じて待ってるからっ!」
 彼女の叫びをかき消すように背後から銃声がした瞬間、大地を蹴って空へと逃げた。あの日から成長していない自分を罵りながら、振り返らずに逃げ出した。



  ◆  ◆  ◆



「社長、“巫女”に変化がありました」
 ザキヤからの報告を受けて、彼女を軟禁している部屋へと向かう。
 薬で眠らせてから十五分ほど。そうでもしないと現れない“巫女の翼”は、一体どのような形なのだろう。期待に胸を高まらせ、扉を開ける。
「…なるほど、これはそのまま“鍵”となるわけだ。後は“鍵穴”の場所さえ分かれば、僕の、先王の望みは叶う」
 横たわる少女の背から生えた、薄桃色に光る機械的な形の翼。見つけ出すのに随分手間取ったが、ついに手中に収めた。これさえあれば、“覚翔の光”が起動する。千年前は裏切り者のせいで失敗に終わったが、今度はそうはさせない。目指す世界は、もうすぐそこだ。



  ◆  ◆  ◆



 “月夜の双牙”本拠地、会議室。一人を除いて先日と同じ顔ぶれが揃い、それぞれ資料に目を通していた。
 あの後、傷心のまま戻った自分を待っていたのは幹部への緊急招集だった。アルケンジェル社が突如として保有する兵力のほぼ全てを動員し、飛行船の周囲にそれを展開。十重二十重の防衛網を築き、ネズミ一匹すら飛行船へ近づくことができない状態にしているらしい。傍受した通信によると政府の呼びかけにも完全な沈黙を貫き、真意は不明。ただ、何も無いと考えるほど楽観的な状況でないことだけは確かだ。
「…さて、状況は飲み込めたでしょうか」
 この情報を一番に聞きつけ、各自の手元にある資料を作ったファストが言う。
「アルケンジェル社の全戦力が一点に集中し、それに伴い政府は防衛力の低下と情報不足による混乱を起こしています。アルケンジェル社の狙いが何であれ、両者を一度に叩くのにこれ以上の機会はありません」
「そんなことは見れば分かる。アタシらはどう立ち回ればいいのか、それは考えてあるんだろうな」
 相変わらず回りくどい説明を嫌がるツシュルータに、もちろん、と答えるファスト。そのやりとりの間にエイトが追加の資料を配る。“月夜の双牙”が総力を上げて調べ上げた、飛行船内部の地図だった。以前の依頼で渡されたものよりかなり精度が上がっているのが見て分かる。
「現在、僕達に同盟を申し出てきた組織との連合軍を結成して順次戦闘配置につかせています。半分は政府の攻略用。もう半分は、飛行船周辺に展開されている部隊の殲滅用です。もちろん、後者の部隊の目的はそれだけではありません。敵陣の何箇所かに穴を開け、僕達が密かに飛行船内へ侵入するための援護をしてもらいます。進入に成功したらその後は各自、今渡した地図に書き込んであるルートを使って作戦開始。最終的には動力部を破壊し、脱出艇を奪って逃走、となりますね」
 長々とした説明を締め、皆に資料を見るよう促す。それによると、ネルノは潜入組には加わらず同盟軍の陣頭指揮官として別行動。最も戦闘力に長ける双牙の二人が、主要な通路の正面突破及びそこに集まってくる敵の殲滅。エイト、ファスト、ヒキルはそれぞれ通気口などを経由して破壊工作を行う。そして自分は、戦闘区域外で待機。飛行船が飛び立ち、内部で双牙が敵の大部分をひきつけた頃に空から進入。全ての元凶ララリエルを探し出して討ち取り、他のメンバーと合流して動力部を破壊。船を沈める。
「…随分と、無茶な注文つけてくれるな」
「全くだ。主力三人の力を過信してないか。これじゃあ命がいくつあっても足りん」
 珍しくファルフサが賛同する。どれだけ都合よく計算しても、全員生きて帰ってこられる可能性はかなり低い。そもそも、詳細に描かれた地図の中で唯一『不明』とだけ記され黒く塗りつぶされているのが、最終目標の動力部だ。噂に聞いたことはあるが、どうやら本当にブラックボックスとなっているらしい。
「ま、その辺は皆で協力するしかねーかな。それよりもだ」
 ネルノがこちらに向き直る。これから始まる話の内容は、分かっていた。
「連中はなんで、有翼種にして最大の脅威である君を二の次にしてまでシエルちゃんを連れて行ったんだろうね」
 奇妙なことに、アルケンジェル社が行動を開始した時間は、シエルがさらわれた時間とほぼ符合する。彼女の存在がアルケンジェル社の行動にどういった意味を持つのか、全く見当がつかない。
「…あるいは彼女も有翼種なんじゃないでしょうか。それなら最初に二人の翼を言い当てたこともそういう能力だと仮定すれば納得できるし、そんな特異な能力ならアルケンジェル社も動くでしょう」
「珍しいね、エイトがそんな推理をするなんて。それは僕の役目だろう?」
 父と息子ほども身長差のある二人のやりとりに、張り詰めていた場の空気がほんの少し和らぐ。だが、それも一瞬。今まで沈黙を保ってきたヒキルが、意を決した顔をして言った。
「……作戦開始時刻だ」



  ◆  ◆  ◆



 目が覚めると、見知らぬ場所に私はいた。
 どうやらここは球形になった部屋らしい。床は赤いカーペットで敷き詰められ、壁の半分は全面ガラスで外の景色が一望できるようになっていた。
 ――そうだ、私、あの人達に捕まって。
「お目覚めですか、“巫女”」
 背後にあった扉が開き、男が一人入ってきた。私を捕らえた、ザキヤと呼ばれていた男ではない。何か企んでいるような笑みが不気味で、それ以上に禍々しいまでの“翼の気配”がする。それに、私のことを“巫女”と呼んだ。
「…あなたね、ララリエルというのは。何者なの?」
「本当は分かっているんでしょう、ボクの正体が何かなど……まあいい、それなら見せてあげますよ」
 そう言い放った彼の背中に、力が集まっていくのが感じ取れた。やがてその力は寄り集まり、弾け飛び、実体を伴って溢れ出す。現れたのは、白に輝く巨大な六枚の翼。
「これこそが、ボクの全て。王家に連なる者だけが持ち得る“神の翼”です」
 違う。あなたは王でも神でもない。私の一族を執拗に追い回し、亡き国の理想を求めて彷徨うただの亡者だ。その行いの先にどれだけの栄光があったとしても、やっていることは命の軽視でしかない。だから私の先祖も、メシアも、あなたの一族から逃げたんだ。
「やれやれ、嫌われてるねぇ…でも、こうなってしまえばもう逃げられない」
 私の顔を掴んで、無理矢理目を合わせさせてくる。何をするつもりか気づいた時にはもう遅かった。体の自由が利かなくなっている。これは――“支配者の瞳”だ。
「さあ、教えてもらおう。“覚翔の光”は何処にある?」
 消えかかった意識をかき集め、抵抗を試みる。この質問にだけは、絶対に答えるわけにはいかない。あれが起動するようなことがあったら、きっと、世界中で悲惨な殺し合いになる。それが終われば、次に待つのはこの男による独裁だ。
 だけど、この能力にこれ以上耐えるのはもう限界。眠気にも似た、泥に沈んでいくような感覚が意識を塗り潰していく。霞んでいく視界に相手の勝ち誇ったような顔を見て――刹那、響き渡った轟音に目が覚めた。
「…ふん、随分派手にやってくれるじゃないか」
 そして私は、また一人となった。



  ◆  ◆  ◆



『――というわけで、政府の制圧はほぼ完了。我々の最終目標は半分達成できたわけだ。飛行船は現在そちらに向かって進行中。もちろん全員侵入には成功してる。後は、君だけだ。よろしく頼むよ――救世主』
 その言葉を最後に、通信機は物言わぬ鉄の塊となった。もう使わないそれを投げ捨てる。今回の装備は身一つ。正確に言えば、翼だけだ。小細工などいらない。ただ暴力を振るって相手を殺し、決着をつける。自分にはそんなことしかできない。かつて救世主と呼ばれた者のように、全てを守ることなど不可能だ。自分と彼は、当然だが違う。
「来た、か」
 そびえ立つビル街の向こうに、満月輝く夜空を切り裂いて浮かぶ飛行船が見えた。白に輝く翼を広げ、飛翔する。天への近さを競い合って建つビルを幾つも抜き去り、空に浮く船の真上にたどり着く。翼を翻し、真っ直ぐに落下。着地の瞬間に態勢を整え、甲板に渾身の蹴りを見舞う。
 翼を掴んで力任せに引き抜き、剣を生み出す。床を切り裂いて一人が通れる程度の隙間を作り、そこへ潜り込む。地図が正しければ、降りた先には動力部への入り口があるはずだった。
「っと、誰もいない…?」
 着地した瞬間警備兵に囲まれるくらいを想定していたのだが、予想に反して警報の一つすら鳴らなかった。まさか本当に、全員双牙の方へと向かったのだろうか。
「…まあ、いないに越したことはないな。それよりも、ここだ」
 この飛行船の動力部。ブラックボックスとして門外不出にされてきたこの部屋に、アルケンジェル社の全てが詰まっていると言っても過言ではない。まだ各種の目的を果たしていないためいきなり破壊するわけにはいかないが、どこをどう壊せばいいのか調べる程度はしておきたい。そう考えて、まず最初にここへ来たのだ。
 厳重に施された扉の鍵を、剣の一振りで破壊する。返す刀で扉そのものを破壊し、蹴りを加えて一気に崩す。
 そして、見てはいけないものを見た。



  ◆  ◆  ◆



 “月夜の双牙”を率いる最強の二人は、血にまみれていた。
 歩いた歩数分の死体が通路に並び、周囲を紅が覆う。船内に待機している特殊武装兵士三百名のうち、七割以上がここまでの戦闘で死んでいる。むせ返るような血と硝煙の臭いが空気を支配するそこは、まさに地獄だった。
「やっと出てきやがったな、大将さんよ」
 ファルフサの“鷹の目”が睨みつける通路の奥に、その男はいた。貼り付けたような笑みを浮かべるアルケンジェル社の社長秘書兼護衛兵長、ザキヤ。隣には部下らしい男が鉄の棒を握って立っている。
「残念ですが、貴方達の負けです。もう信頼できる仲間はいません」
 開口一番そう言ったザキヤが、二人目掛けて紙切れの束を投げつけた。ツシュルータがそれを受け取って開き――驚愕の表情を浮かべた。
 それは、監視カメラが定期的に撮影する写真のコピーだった。白黒で出力された画像に写されていたのは、血まみれで倒れるエイトとヒキル、そしてその二人に銃を向ける、ファストの姿だった。
「――嘘だ!」
 ツシュルータの顔が憤怒に染まり、両足のナイフを抜き放つ。だが、それだけだった。ザキヤが懐から小さな白い宝石を取り出した瞬間、駆け出そうとした“旋風の脚”が止まった。ファルフサも閃光を喰らったように目を押さえる。
「この石は社長の、“翼の王”の一族に伝わる不思議な石でしてね。何故かこのように翼の力を封じることができるんですよ」
 そう言って陰鬱な笑みを浮かべるザキヤの頭上、作業員用の高架通路から足音が聞こえてきた。足音はすぐに大きくなり、扉を開けて少年一人分の影を通路に形作る。現れた全身は、ファストという名の少年のそれ。彼の目は、普段の言動からは想像できないほど無感動な瞳をしていた。
「…悪く思わないでください。僕は、妹を助けるためなら何だってします」
「どうですか。いいお話でしょう、彼の兄弟愛は。せっかくですから、どういうことか説明して差し上げましょう。この船の動力は――」



  ◆  ◆  ◆



 ――この船の動力は、有翼種だった。
 扉の向こうにあったのは、数十個のカプセルの森だった。カプセルの中には薄桃色の液体が満たされ、鎖と電極に繋がれた有翼種が浮いていた。カプセルの根元に取り付けられた機器の表示が、中にいる者がまだ生きていることを、そこから力を奪い続けていることを示していた。
 まさか、シエルもここに――そんな最悪の予感がして恐る恐る他のカプセルを覗いていくと、もっと最悪な光景に出くわした。
「あ…う、嘘だ……!」
「嘘じゃない。そこにいるのは君が姉と呼んでいた女性、“預言者の翼”を持つ者だ。もっとも、周囲には翼のことを隠していたようだけどね」
 突然の声に振り返る。背中の翼が、変わり果てた姿の姉を包むカプセルに触れた。いつからいたのか、不敵に笑うその男の背には、白に輝く六枚の翼があった。歴史上、この形の翼を持つ者はただ一人。かつて戦乱を巻き起こした張本人、“王”だ。
「ボクはアルケンジェル社の社長にして、これから始まる新しい世界の王、ララリエルだ。キミだね、メシアの生まれ変わりは。――もう一度聞こう。ボクの仲間にならないかい?」
 あまりにも自然な振る舞いに、腹の底から怒りがこみ上げてくる。姉を、大勢の命をこんな形で利用しておいて、よくそんな口が叩けるものだ。頼まれなくてもこんなやつ、今すぐに殺す。
「ああ、待った待った。少しは人の話を聞いたらどうだい。…キミは、“翼とは何なのか”を考えたことがあるかい?」
「なん…だと」
 振り上げた剣が力の行き先を失い、床にぶつかって乾いた音をたてる。
 翼とは何なのか。そんなことを意識して考えたことは無かった。しても意味が無いからだ。何であろうと知った程度で生まれた時から持っているそれが消えてなくなるわけでもない。そう思って、思考を止めていた。この男は、その解にたどり着いたというのだろうか。
「知らないのなら、教えてあげよう。翼とは、一言で表すならば“具現化した才能”なのさ…」



  ◆  ◆  ◆



 つまり、生まれつき筋力に優れた子は身体を強化できる翼をもって、知力に優れた子なら並外れた英知を生み出す翼をもって生まれるということだ。たまたま才能が、翼という目に見える形で現れたというただそれだけの話。それはつまり、全ての人々は潜在的な翼を持っている可能性があるということだ。
「そして我々は、これからその“潜在的な翼”を目覚めさせます。“覚翔の光”と呼ばれる、古代の遺産を使って」
「“覚翔の光”を起動させるには、この船のように大量の有翼種から翼の力を注ぎこみ、その上で“巫女”と呼ばれる特殊な翼の持ち主――シエルさんを繋ぐんです。千年前はメシアと共に巫女が逃げ出したせいで結局使われることはなく、その際に重要な資料の数々も盗み出されたためどこにあるのかすら今まで分からなかったそうです。でも、もう巫女はここにいます。拷問でも何でもすれば、場所もそのうち吐くでしょう」
 ザキヤの説明に、ファストが補足を入れる。
 そんな二人を見てファルフサが、せめてもの反撃として吐き捨てる。
「それで、全員が翼を持つようになりかつての王国が復活、お前らは高い階級について他の奴らを好きなだけ見下せるってわけだ」
「ひどい言い方ですねぇ。それに、ファスト君はそんなことを望んではいませんよ。彼はただ、協力する見返りとして妹さんを船の動力から解放してほしいだけです」
 ザキヤからの反論。常に笑い顔を貼り付け、言葉の端々にも微笑の混じるその喋り方からは、どこまでが真実なのか分からない印象を受ける。そんな彼が「さて」と言葉を区切り、頭上にいるファストへこれ以上ないほど冷酷な声で言った。
「少々喋りすぎました。そろそろ消えてもらいましょう。あなたに任せても、平気ですね?」
 少年は何も答えず、手にした銃を動かして――躊躇い無く、撃った。
 響き渡る銃声。砕け散ったのは、ザキヤの手に握られた、白の宝石だけだった。
 刹那、ツシュルータが駆け出すのと、異変に気づいたザキヤが銃を取り出すのが同時だった。しかし。
「遅い!」
 訓練されているだけで“常人よりやや優れている”程度の身体能力しかない者と、“旋風の脚”の差は歴然だった。構えた銃が回し蹴りに弾き飛ばされ、周囲がそれに反応するよりも早く、ツシュルータの体は飛び上がって空中。近くにあった柱を蹴りつけて加速し、全体重を乗せた膝蹴りをザキヤの顔面に叩き込む。
 ようやく何が起こったのか把握したザキヤの部下が得物を振り下ろした時にはもう、目標は彼の背後。無防備となった背中にナイフの刃が突き刺さり、悲鳴を上げるよりも早くその頭を銃弾が貫いて息の根を止めた。
「なめた真似を…してくれますね…」
 輪郭を歪ませながらも笑って立ち上がったザキヤの頭上。ファストの両隣には全身を血に見せかけただけの塗料で染めた、エイトとヒキルが立っていた。
「敵を欺くにはまず味方、というわけで一芝居うたせてもらいました。色々話している間にシエルさんは外へ逃げているはずだし、今までの会話は全て地上に向けて送信済みです。あなた方の味方をしてくれる人は、何人いるんでしょうね」
 いたずらに引っかかった大人を見たときのような、無邪気な少年の笑顔がそこにあった。それを見上げるザキヤの顔が初めて憎憎しげに変化し、背中から予備の銃を取り出して狙いを定める。させじと“鷹の目”で放った弾丸が弾倉を正確に貫き、ザキヤの手首から先を巻き込んで爆発した。
「それじゃあ、これで」
「………終わりだ」
 エイトとヒキルが、それぞれの得物である大型ランチャーと手榴弾を使い、通路に爆風と煙を呼ぶ。血の臭いを追い出すほどの煙が晴れると、そこには肉と骨の欠片が散乱するばかりで、ザキヤと呼ばれていた男の姿は、無かった。
「…お前達のリーダーは死んだぞ。投降する気があるのなら素直にそうしろ。無いのなら、遠慮なく殺す」
 そう呟くファルフサの前には、新たに登場した残りの兵士が、通路を埋め尽くすように並んで立っていた。



  ◆  ◆  ◆



 教えられた通りに飛行船の中を進み、ようやく外へ出ることができた。破壊工作の成果が出ているのだろう、所々で壁から少しずつ炎がもれている。吹きつける夜風の冷たさが、それを食い止めているようだった。ふと甲板に目をやると、床が一箇所切り抜かれて、通り抜けできるほどの穴が開いていた。こんなことをするのは、多分ギオン君だろう。
「…この下にいる」
 翼が生み出す力の脈動を感じる。“覚翔の光”を起動させるために捕らえられた人達が大勢いるのだろう。大小様々な力が一箇所に詰め込まれているのが離れていてもよく分かる。その中に紛れた、強い力を放つ翼が、二つ。…戦っている。
「お、らああああああああ!」
 そう思っていたら、床板を吹き飛ばして二つの影が飛び出してきた。いや、先に出てきたララリエルは普通に開いていた道を通って外に出てきただけ、叫びながら穴を広げたのは、それを追いかけてきたギオン君だけだった。
「何が“覚翔の光”だ。そんな望んでない奴にまで翼を生やすような真似、させてたまるかよ」
「キミこそ、迫害の日々から救ってあげようと言っているのに、何故それを断るんだい。ボクにはその方が理解できないね」
 その会話から、もう彼が全てを知ってしまったことに気づいた。できることならずっと隠し通して、ただの少女として傍にいたかったが、それももう叶わない。
「…おや、巫女様じゃないですか。こんなところを散歩とは感心しませんね」
 空中で睨み合っていたララリエルがこちらに気づき、その笑みを深くした。翼の一つを掴み、羽を何枚か引き抜いて投げつける。迫る刃をただ見つめることしかできない私をかばうようにギオン君が立ちふさがって、それを一つ残らず叩き落す。
 ただ、弾いた刃の向かう先が、悪かった。
 弾かれて目標を見失った刃の一つが、あろうことか穴の中の、むき出しになった送電線とガス管に突き刺さった。漏れ出したガスが飛び散る火花に着火し、爆発。私とギオン君は、爆風で悲鳴を上げる間もなく壁まで吹っ飛ばされた。
「…ぅ」
 痛い。打ち付けられた衝撃で、全身が軋む。
「…シエル、その翼…」
 そしてやはり、見られた。巫女の翼は、他の翼を強化する作用のあるきわめて特殊な翼だ。自分が傷を負うと、それの作用を自分に働かせて傷の回復を早めようとする。たとえ理性が翼の出現を拒んでも、勝手に。
「見とれている場合じゃないよ、裏切り者の弟。奇しくも状況は千年前と全く同じだ。兄である王から巫女を奪って救世主となりたくば、戦え」
「言われなくても、そのつもりだ」
 二人が同時に、翼を掴む。勢いよく引き戻したそれぞれの手には、羽が変じた半透明の剣。傍目には全く同じものに見えるが、よく見ると細部の形が若干異なる。
 満月を目指すように高く飛び上がる、六枚と二枚の翼。そして鳴り響く、剣劇の音色。風すら追い抜いて自在に宙を舞い戦う姿は、速すぎて方向の狂った稲妻のようにも見える。ぶつかり合う度に金属音が響き渡り、衝撃波が風と混ざって世界を歪ませる。全く互角に見えた戦いはしかし、何度目かの衝突で、変化した。
「――ギオン君っ!」
 彼の剣が、唐突に折れた。衝突の勢いを抑えられずに吹き飛び、そのまま壁に叩きつけられる。ぶつかった形に壁がへこみ、鉄片がいくつも砕けて散った。
 慌てて駆け寄って触れると、手に生暖かい感触。見れば、頭からひどい出血をしている。
「さて、チェックメイトだ」
 悠然と降り立ったララリエルはそう言って、剣を振りかぶる。
「シエル」
 やけにゆっくりと感じられる時の中で、彼は鉄片を握り締めながら言った。
「お前の翼、綺麗だ。誰にも渡さない」
 そして、その時ようやく、間違いに気づいた。
 彼は、全てを救う“救世主メシア”じゃない。私を愛してくれる、“私の救世主セイバー”なのだと。

To be continued...

このあとがきの方針↓

「ごめんなさい、場違いな時、どんな言い訳をしたらいいか分からないの…」
「開き直ればいいと思うよ」

というわけで、FLASH作家のファンイベントに小説で乱入するという外道行為に走りましたthです。色々とすいません。徹夜で完成させてちとテンションおかしいのですが、以下色々と裏話を交えつつ延々語ります。


・大雑把な製作日記

7月始め:イベントの存在を知る
7月某日:なんか小説でもよさそうな雰囲気なので書くことにする
7月後期:知り合いの方がTWやり始めたと聞いたので製作そっちのけで一緒に遊ぶ
8月1日:ラプトイエーガーにスミ入れしたりする
8月2日:そろそろ真面目に書き始める
8月3日:実家に帰る日程が決まる
8月4日:まだ慌てるような時間じゃない
8月5日:断章のグリム2巻を読み終える
8月6日:竿灯祭りを見に行こうと思ったが、結局やめた
8月7日:どう見ても間に合いません、本当にありがとうございました
8月8日:結局一睡もしないで書いた


・作品解説

救世主猫のストーリーを空想と妄想に任せてでっち上げ、所々に月夜も混ぜた。
重要キャラの名前は天使の名前から一部もらってたりする。
本当はもうちょっと色々なキャラの視点から描くつもりだったけど、
進行状況があまりにアレだったので泣く泣く大幅に削った。おかげで生かしきれていない設定が多いorz
読み返してみると某天空の城や某絆が伝説を紡ぎだすRPGなんかに影響を受けている気がしないでもない。


・色々と技術的な話

気づく人はすぐに気づくと思いますが、最初の方のザキヤの一人称部分。
あれ一人称にしてはちょっと不自然です。
でも直してる余裕が無かった・・・orz


・To be continued で終わっているが

これは原作に準規しただけであり、断じて時間不足から無理矢理終わらせたわけではありません。
なので続きを書く予定は今のところ無し。


・最後に
ベタな言葉ですが、読んでくださってありがとうございます。

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